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埼玉県

令和7年度 地域型食品企業等連携促進事業 企画・運営

2026.03.31

PROFILE

品川 結貴

地域の食を活かした商品・イベント・場づくりの企画から運営まで、目的や目標を明確にしたプロジェクトとしてマネジメントを行っています。

デジタルマーケティングを強みとし、30〜40代をターゲットとした「日常に溶け込む地域体験」の設計を得意としています。

品川結貴

企画概要

規格外農産物を、飲食・製菓の現場で使える「高付加価値一次加工素材」へ


埼玉県では多様な農産物が生産されている一方、形状やサイズが市場の出荷基準に合わない農産物は、品質に問題がなくても流通に乗りにくく、廃棄または低価格で取引されるケースがあります。


また、生産者による6次産業化の取り組みが広がる一方で、収益性の高い商品づくりや、継続的な販路の構築には課題が残されています。


一方、飲食・製菓業界では、人手不足や人件費の高騰を背景に、下処理の手間が少なく、品質と味を安定して再現できる一次加工素材への需要が高まっています。


そこで本事業では、生産者と飲食・製菓事業者をつなぐ中間支援者として、規格外農産物を活用した「現場で使いやすい一次加工素材」の開発と市場性の検証に取り組みました。


対象とした主な農産物は、次のとおりです。


・金ごま

・いちご「あまりん」

・みかん、金柑

・さつまいも


単に規格外農産物を加工するだけでなく、品種特性や加工条件による味の変化を、味覚センサー分析と官能評価によって数値化。


用途に応じて「狙い通りの味」を設計できる加工技術の基盤づくりと、地域内外をつなぐ新たなフードチェーンモデルの構築を目指しました。


実施概要

産地・加工・飲食・消費者をつなぐ実証型プロジェクト


本事業では、埼玉県内の農家を訪問し、規格外農産物が発生する背景や出荷基準、現在の取り扱い状況を確認しました。


その上で、食品加工事業者、厨房機器メーカー、埼玉県産業技術総合センターなどと連携し、一次加工、味覚分析、試作品開発、店舗での提供、消費者アンケートを実施しました。


主な実施プロセス


産地視察・生産者ヒアリング


埼玉県内の生産現場を訪問し、形状、サイズ、受粉不良、過熟、収穫・運搬時の傷など、規格外品が発生する要因を確認しました。


あわせて、現在の販売・廃棄状況や加工利用に対する生産者の期待をヒアリングし、農産物ごとに活用可能性を整理しました。


一次加工方法の検証


農産物を飲食店や製菓店が導入しやすい素材にするため、蒸し、焼成、ピューレ、シロップなどの加工方法を検証しました。


味だけでなく、洗浄、選別、皮むき、種の除去、保存性、輸送条件など、実際の業務用流通に必要な条件も確認しました。


味覚センサーによる分析


農産物の品種や加熱条件による味の違いを、味覚センサーによって分析しました。


甘味、酸味、苦味、渋味、うま味、コクなどを数値化し、感覚的に語られがちな農産物の味を、商品開発や商談で共有できる情報として整理しました。


官能評価・消費者アンケート


味覚センサーの分析結果に加え、試食による官能評価を実施しました。


また、規格外農産物を使用したパフェを店舗で提供し、味、見た目、商品としての魅力、規格外農産物に対する印象などを調査しました。


 


さつまいもの実証

加熱条件によって変化する味を、用途に合わせて設計


規格外さつまいもは、サイズが小さすぎるものや大きすぎるもの、取り扱い時に傷がついたものなどを対象としました。


まず、次の6品種について、蒸し・焼き、皮あり・皮なしの条件による味覚の違いを比較しました。


・べにはるか

・紅あずま

・シルクスイート

・安納芋

・ふくむらさき

・あまはづき


検証の結果、品種だけでなく、加熱方法や皮の有無によって、酸味、苦味、渋味、うま味などのバランスが変化することが分かりました。


なかでも「べにはるか」は、加熱条件による味覚バランスの違いが確認されたため、温度と時間を変えた追加検証を実施しました。


「べにはるか」の加熱条件比較

・100℃・3.5時間

芋の風味とコクが強く、味の輪郭が立つ


・150℃・2.5時間

甘味が高く、酸味や渋味が抑えられ、全体のバランスが良い


・200℃・1.5時間

香ばしさと個性が強く、苦味や渋味などの刺激も増える


78件の試食アンケートでは、半数以上の回答者が加熱条件による味の違いを認識しました。


この結果から、同じ品種のさつまいもでも加熱条件を変えることで、菓子、デザート、料理、業務用加工素材など、用途に合わせた「味の設計」ができる可能性が確認されました。


みかん・金柑の実証

加工適性と、地域内利用の可能性を検証


規格外のみかん・金柑について、果汁、ピューレ、シロップなどへの加工可能性を検証しました。


適切に加工すれば、規格品と比較して品質上の大きな問題はなく、飲料、ジェラート、ソース、デザートなどへの活用が可能であることが確認されました。


一方、金柑には種が多く、小さな種を完全に取り除くことが難しいことや、未成熟な果実には強い苦味が出ることなど、加工時の課題も明らかになりました。


また、みかんは産地内では甘味、酸味、うま味のバランスが良いものの、加工内容によって味の印象が弱くなる場合があり、加糖や味の調整が必要となるケースも確認されました。


柑橘類は比較的単価が低く、重量に対して輸送費がかかるため、産地近隣で一次加工し、地域内で利用するモデルが適していると考えられます。


規格外いちご「あまりん」の実証

ブランド価値を活かした、広域B2B流通の可能性


規格外いちごについては、受粉不良による形状の乱れ、過熟、取り扱い時の傷、サイズ不足などの果実を対象に、ピューレ、ソース、ジェラートなどへの加工適性を検証しました。


色味や味にばらつきがある果実については、一定の選別・加工ロスを見込む必要があります。


一方、ピューレやジェラートなどの加工用途では、品質上の大きな問題はなく、業務用素材として十分に成立することが確認されました。


特に埼玉県のブランドいちご「あまりん」は、市場価格とブランド価値が高いため、規格外品であっても、加工素材として一定価格で取引できる可能性があります。


さつまいもや柑橘とは異なり、軽量で高付加価値な「あまりん」は、地域内だけでなく、首都圏をはじめとした広域のパティスリー、レストラン、ホテルなどに向けたB2B素材として展開できる可能性が示されました。


 


消費者アンケート

規格外農産物への印象は約97%が肯定的


規格外農産物を使用したパフェを試作・提供し、32件の消費者アンケートを実施しました。


その結果、「とても良い印象」が13名、「良い印象」が17名となり、約97%が規格外農産物の活用に肯定的な印象を持っていることが分かりました。


肯定的に評価された主な理由は、次のとおりです。


・フードロス削減に貢献できる

・生産者支援につながる

・規格品と味は変わらない

・農産物を無駄なく活用できる


一方、来店や購入の最初のきっかけは、規格外農産物を使用していることではなく、パフェの美しさ、味、素材の組み合わせなど、商品そのものの魅力でした。


このことから、「規格外だから選ばれる」のではなく、まず商品としておいしく魅力的であることが重要であり、その上でフードロス削減や生産者支援のストーリーが付加価値として機能することが確認されました。


伝え方に関する検証


「規格外」よりも、社会的価値を伝える表現へ


メニューに規格外農産物を使用していることを記載するかという質問に対しては、約6割が表記に肯定的な回答をしました。


表記によって、素材の背景を理解できることや、企業の姿勢が伝わること、消費者自身が選択できることが評価されました。


一方で、「規格外」という言葉に対して品質への不安を感じる回答も一部見られました。


消費者が好意的に受け止めた表現は、次の順となりました。



  1. フードロス削減に取り組む素材

  2. 規格外農産物を活用

  3. 形が不揃いでも味は同じ素材


規格外農産物を「問題のある素材」として伝えるのではなく、「フードロス削減素材」「サステナブル素材」「未利用農産物を活用した素材」など、社会的価値を持つ素材として表現することが重要であると分かりました。


成果

規格外農産物を「安価な代替品」から「設計できる業務用素材」へ


本事業を通じて、次の成果が得られました。


・規格外農産物がB2B向け加工原料として十分に活用できることを確認

・味覚センサーと官能評価を組み合わせ、加工条件による味の変化を可視化

・同じ品種でも加熱条件によって用途に適した味を設計できる可能性を確認

・さつまいも、柑橘、いちごで異なる加工・流通条件を整理

・規格外農産物に対して約97%の消費者が肯定的な印象を持つことを確認

・「商品としての魅力」を最優先とし、社会的背景を付加価値として伝える方向性を明確化

・重量、単価、保存性、ブランド価値に応じた流通モデルの必要性を確認


一方で、規格外農産物を飲食店が直接取り扱う場合には、洗浄、選別、皮むき、殺菌などの作業が必要となり、人件費と作業負担が大きくなります。


食品加工施設でも「洗浄済み」「殺菌済み」などの原料条件を求めるケースが増えていることから、生産者と飲食店の間で一次加工を担う拠点の必要性が明らかになりました。


今後の展開

農産物の特性に合わせた地域フードチェーンの構築へ


今回の実証から、規格外農産物の活用方法は、すべての品目で同じではないことが分かりました。


さつまいもやみかんのように、重量があり比較的単価の低い農産物は、長距離輸送によるコストの影響が大きいため、産地周辺で一次加工し、地域内の飲食店や菓子店で利用するモデルが適しています。


一方、「あまりん」のように軽量でブランド価値の高い農産物は、規格外品であっても高付加価値な加工素材として商品化しやすく、首都圏を含む広域B2B流通の可能性があります。


今後は、農産物の重量、単価、保存性、ブランド価値に応じて、地域内利用と広域流通を組み合わせた加工・流通モデルを構築していきます。


また、令和8年度には、東京都内のパティスリー「INFINI」と連携し、「あまりん」を使用したパフェやスイーツを期間限定で販売する予定です。


規格外いちごを使用したソルベやソースなどを通じて、実際の店舗における商品性と消費者の反応をさらに検証します。


KIBOでは今後も、生産者、加工事業者、飲食・製菓事業者、消費者をつなぎ、規格外農産物を「廃棄されるもの」から「地域の価値を生み出す素材」へと変える、持続可能なフードチェーンの構築に取り組んでまいります。


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